今年もコロナ禍でお盆を迎えます。数年前までは、お盆に帰省し家族や親族と会うことが当たり前でしたが、昨今はそれも難しく、コロナ禍以前がとても懐かしく思えます。お盆といえば、ご先祖さまをお迎えし、ご供養する行事ですが、親族や友人と再会することも楽しみの一つであったのではないでしょうか。
以前、あるお檀家さんと話していた時に、お盆の帰省の話になりました。いつもお盆の時期は帰省し、お墓参りの後に親族で食事会をするそうですが、コロナ禍以降は帰れていないとのことでした。お盆の帰省は子どもの楽しみの一つであったし、なにより自分もご先祖さまの供養ができないのが残念だと話しておられました。
法然上人のご法語に「衆生、仏を礼すれば、仏これを見給う。衆生、仏を唱うれば、仏これを聞き給う。衆生、仏を念ずれば、仏も衆生を念じ給う」というお言葉があります。これは親が子を見守るように私たちの行いや思いを、阿弥陀さまは常に極楽浄土から見ていてくださるということです。阿弥陀さまのいらっしゃる極楽浄土は、お念仏の功徳によって往生された方々がお生まれになる場所。阿弥陀さまと共にご先祖さまも私たちのことを見守ってくださっています。
私たちはより良い将来のため、常に先のことを考えて生きています。しかし過去を振り返ってみると、今の自分があるのはご先祖さまのおかげでもあります。私たちは2人の両親、4人の祖父母、十代前は1024人、二十代前まで遡ると百万人以上のご先祖さまがおられます。もし1人でもいなければ今の自分はいません。当たり前のように生きている自分も、多くの命やご縁によって生かされている、とても有り難いことなのだと思い起こし、ご先祖さまへの感謝の念を深めていただければと思います。
まもなく、コロナ禍での3度目のお盆。まだまだ終わりは見えませんが、少しずつ元の生活に戻りつつあるような気がします。以前のように過ごせるのはもう少し先になるかもしれませんが、これから迎えるお盆には、阿弥陀さまとご先祖さまに感謝の気持ちを込めてお念仏をおとなえいたしましょう。きっと極楽浄土から私たちを見守ってくださいます。
(三重県松阪市 樹敬寺 山下大信)
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